相続関係コラム⑲~所有者不明土地対策について(続報)

相続関係コラム⑲~所有者不明土地対策について(続報)

 これまで何度か「所在不明土地問題」「相続登記の義務化」についてとりあげてきました。 昨年の段階では、まだ民間の有識者で作る団体の報告書、という位置づけだったものが、平成30年5月1日に、政府の関係閣僚会議で基本方針が決定されましたのでコラムを書きます。 ニュース等でも結構取り上げられているので、見た方も多くいらっしゃるかもしれませんが、いよいよこの問題が本格的な検討に入ります。

1 方針の概要

今回の方針の大きな方向としては、以前のコラムと共通するのですが
(1)土地の所有権を放棄できる仕組みの創設の検討
(2)相続登記の義務化
(3)関係する法律の改正を2020年までに行う
というものです。

2 世の中の状況

 最近、切り立ったところにある竹林の管理ができていないために、下に住んでいる住民が不安に思っていることなどがニュースに取り上げられるように、 誰も管理しない、管理できない土地というものは存在していますし、これからもっと増えていくことになります。

3 なぜ相続登記を義務化する必要があるのか。

 これまで相続登記は任意のもので、やってもやらなくてもどちらでもいいものとされてきました。 そのため、祖父・祖母の代のまま相続手続きがされていない不動産やすでになくなった方がたくさんいる共有の不動産が存在するなど、その不動産を活用しようと思っても活用ができない不動産がどんどん増えています。 今歯止めをかけないと、将来における不動産の凍結による様々な問題を避けることができないものであると考えられています。 そのため、まずは相続登記を義務化して、これ以上所有者不明土地が増えないようにしようというのが義務化の理由です。

4 なぜ土地の所有権を放棄する仕組みが必要なのか。

 「不動産は価値があるのだから、放棄しなくても売ればいい」という人も多くいらっしゃいますが、地方、とりわけ田舎の不動産については、売ろうと思っても売れないケースはままあります。
 土地によっては、以後の管理にお金がかかることなどから、ただでももらってくれないケースというのも何度も目の当たりにしているところです。「負」動産という言葉が使われたりすることもあります。
 どうしても持主は「以前、この土地は◯◯円で買ったのだから、それだけの価値があるはずだ」ということや「固定資産税のところに◯◯円と書いてあるじゃないか」という思いになりやすいのですが、実際には不動産を売れない、手放せないで困っている方も多くいらっしゃいます。
 その手放せない、ということを放置すると、結果として相続登記の未了所有者の不明問題の増加につながることから、所有権を放棄する仕組みには世の中のニーズがあります。実際にはどういう仕組になるか、今後の検討がまたれるところです。

5 過去のコラム

相続関係コラム⑭~所有者不明の土地についての最終報告について~(2017年12月31日)
相続関係コラム⑮~相続登記の義務化について~(2018年01月30日)

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