年末にアップした「所在不明土地問題」と関係するコラムとして、相続登記の義務化について書かせていただきます。
1 これまでのルール
これまでは、相続登記などの権利の登記と言われるものは、義務となっていませんでした。
そのため、世の中には適切な権利関係を反映していない登記が数多くあります。
というのも、例えば相続が発生した場合、相続登記をするには相続人の全員の同意が必要となるため手間暇がかかるうえ、司法書士費用等もかかってしまうから、登記をしない人がいるのも無理ないことでした。
2 相続登記の義務化
1で述べたような状況のもと、世の中の土地の名義が実態とずれてしまうことにより生じる様々な問題が顕在化する中、国は、相続登記の義務化の検討をしていることを菅官房長官が表明されたのをニュース等で見られた方もいらっしゃるかと思います。
たしかに、相続登記を義務化することで、これから先の相続に伴う登記の促進が図れることから、一定の効果が期待できると思われますが、次に述べる問題点があります。
3 相続登記をめぐる問題点
(1)長らく相続登記がされていないため、相続人が多くなりすぎていて、全員の同意を前提とする登記が不可能となっている土地が多いこと
すでに、相続人の数が多くなりすぎてどうにもならなくなっている土地、建物というのは数多くあります。
相続人が何十人にもなっている土地については、一人が反対したり、一人が意思を表明できなかったりした場合には相続登記をすることは困難です。
このことは相続登記が義務化されても変わりません。
相続登記を促進して、実態と登記を一致させるには、この問題を解決するための方策も必要となります。
(2)相続人が欲しがらない土地の扱い
先祖代々引き継いできた土地の中には、その相続人が欲しがる土地もあればそうでない土地もあります。
特に、すでに別の遠いところで生計を立てている相続人にとって、遠方の土地を相続することは多大な負担を負うことになりかねません。
そういう意味では、このような土地を受け継いでくれる受け皿が必要です。
なお、この点については、国の検討の中でも出てきているところです。
4 まとめ
今年の通常国会にも、上記の所在不明土地に関する法案などがあがってくることが想定されています。
この法案は、多くの人に関係する重要なものなので、今後の動向を注視していきたいと思います。