相続関係コラム⑱~民法(相続法)の改正の動きについて(その2)~

相続関係コラム⑱~民法(相続法)の改正の動きについて(その2)~

 前回、2月14日のコラムで相続法改正について取り上げたところですが、いよいよ相続法改正についての動きが本格化してきました。

   相続関係コラム⑰~民法(相続法)の改正の動きについて~

 新聞等でも報道されているとおり、平成30年3月13日に、政府は「配偶者居住権」の新設などを内容とした民法改正案を閣議決定しました。
 これまでのコラムでは遺留分の改正や遺言の改正を中心に取り上げてきましたが、今日は新しく設けられる「配偶者居住権」について取り上げたいと思います。

1 配偶者居住権とは

 配偶者居住権というのは、これまでにない仕組みで、相続が発生した場合において、残された配偶者がこれまで住んでいる住居にそのまま住むことを認める権利のことです。
 この仕組みの導入が検討されたのは、(1)相続が発生した場合において、自宅は経済的価値が高く評価されることから自宅を配偶者が取得すると残りの財産について少なくなってしまい、 他の相続人との遺産分割の結果、残された配偶者の生活が困ってしまうという事情があること、(2)自宅しか財産がない場合において分割でもめてしまうこと、 (3)子どもに不動産を相続させると残された配偶者が子どもに追い出されてしまう危険性があること、などの理由からです。
 この仕組みの概要としては、自宅の権利について「所有権」と「配偶者居住権」に分けたうえで、所有権を子どもに承継させたとしても、「配偶者居住権」を配偶者に与えることで配偶者が以後も自宅に住み続けられるようにする、 というもので、これまでは一つのものであった自宅についての権利(所有権)を分解して帰属させることに特徴があります。

2 その他の改正

 20年以上婚姻している夫婦において、配偶者に住居を生前贈与したり、遺言で贈与の意思を示したりした場合には、その住居を遺産分割の対象から外すことなども予定されています。
 これまでは自宅しかない場合には、配偶者も含め、複数の相続人がいた場合には、分けようがないから、不動産を売却して換金するしかなかったのですが、上記のように生前贈与をしておくことで、 これまでどおり住み続けるということをやりやすくなる見込みです。

3 家族信託(民事信託)の活用

 実は、民法を改正して実現しようとしている上記のことについて、家族信託(民事信託)を使うことで、対応が可能な場合も多くあります。
 例えば、お父さんが長男に対し、「自宅をお前に信託するが、私が生きているうちは私、私が死んだあとは妻が住み続けるようにする。 そのあと妻がなくなったら自分のものにしてもらって構わない」というようなことを叶えることができます。つまり、まさに今回の民法改正で実現しようとしたことは信託を使えば今でも実現ができるのです。

 今回のコラムは、相続法についてのものなので、家族信託についての詳細は省略しますが、家族信託については、当事務所ホームページにコラムを掲載しておりますので、見ていただけると幸いです。

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4 まとめ

 民法というのは、最も重要な法律の一つです。
 今回の配偶者居住権というのは、これまでの相続のルールに比べると、難しい内容のものになっていて、この仕組みがうまく使われるのかどうか、という危惧があります。 例えば、この配偶者居住権について、経済的価値をどのように算定するのか、どのような権利になるのか、などは実務上難しい問題を生じさせるのではないかと思われます。
 ただ、せっかく出来た新しい仕組みなので有効に利用したいと思っております。まだ閣議決定の段階ですが、今後、法律が制定されていく中で、改正の内容を学んでいきつつ、相談者にとってよりよい提案ができるようにしていきたいと思います。

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