家族信託コラム(22)~遺言信託の一考察~

 今日は、ちょっと毛色を変えて「遺言信託」について考えてみたいと思います。

1 金融機関が扱う「遺言信託」と信託法上の「遺言信託」の違い

 多くの金融機関において、遺言書の案文作成から公正証書の作成、そして遺言の保管及び執行をサポートするサービスの呼称として「遺言信託」というものを使っています。
 そして「遺言信託」というと通常、多くの人はこちらのことだと考えているところです。
 しかしながら、信託法上の「遺言信託」というのは、上記の内容とは全く違うものであって、「遺言」で「信託をする」ことを指します(信託法3条2号)。
 通常、家族信託をするにあたっては、財産を託したい人(委託者)と財産を託される人(受託者)の間の契約によって行いますが(これを「契約信託」と言います)、それ以外にも、「私の財産は、私が死んだら・・・という形で信託をしてほしい。受託者は〇〇で・・・」という内容の遺言を書くことで信託することができます。
 こちらが、信託法上の「遺言信託」です。
 両者は、同じ名前ですが、全く別個のものですので、間違えないようにしないといけません。

2 信託法上の遺言信託の限界について

 遺言信託は「遺言」の一つなので、15歳に達した者は単独ですることができます(民法961条)。
 では、15歳に達した者であれば、遺言信託を使ってなんでも信託できるのでしょうか。
 契約による信託の場合(ほとんどがこれです)、家族信託契約を単独で有効に締結するにあたっては、当然、法律行為を自ら単独で有効になしうる必要があります。
 そのため、未成年者であれば法定代理人の同意がなければできません(民法5条)。
 そのことと対比をしたときには、15歳に達して遺言を単独で有効に書けるのだから、という理由だけで、遺言にしたら何でも信託できる、と考えるのは問題があるように思われます。
 最近、通常の遺言を作成する際にあれこれ調べている中で、次のような内容の文献にあたりました。
 「たとえば90歳を超えて物忘れが出てきたりしていたとしても、「全財産を長男にやる」などのシンプルな遺言であればよいが、財産を細かく分類して、複雑な遺言を書くとすると求められる遺言能力は前者に比べて高いものが求められる。」

 私は、この考えが正しいのかなと思うところで、遺言信託をするときにも当てはまると考えています。
 みなさんはいかがでしょうか。

弁護士法人 井上・菊永法律事務所 電話082-554-2515 〒730–0012 広島市中区上八丁堀8–26 メープル八丁堀401号

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