(質問)
「私は、自らの持っている財産である実家や預金について、遺言で誰に渡すかを決めている。もう遺言を書いているのだから、家族信託とかは考えなくてよいのではないか。家族信託と遺言は何が違うのか」
(回答)
この質問は非常によく聞かれるものですので、お答えします。
1 遺言の効力
まず、遺言とはいつから効力が生じるのかを考えてみましょう。
これについては、民法に定めがあり、遺言をした人が死亡したときから効力が生じるとされています。
よって、遺言を書いた人が生きているうちには遺言は効力を生じません。
言い換えると、財産を持っておられる方が認知症などになってしまって判断能力を失った場合には、仮に遺言を書いていたとしても、その遺言をした人が生きている以上、遺言の効力が生じません。
よって、その遺言の内容が「この土地は息子に相続させる」となっていたとしても、息子はその土地をどうすることもできません。
2 家族信託の認知症対策機能
ところが、家族信託は、これまでも書かせていただいたとおり、父親が息子に元気なうちに財産を信託しておけば、その後に父親が判断能力を失っても、息子の判断で不動産を管理することが可能なのです。
これは家族信託の「認知症対策機能」と言われたりします。
3 まとめ
遺言は自らが亡くなった後のことしか決められないのに対し、家族信託は自らが生きているときからその先までのことを決めることができるという違いがあります。
いわゆる「認知症対策」という点では、家族信託の手法はきわめて有用なものですので、自らが認知症になってしまうことに不安を持っておられるかたは、「家族信託」という手法を検討してみると良いと思います。
〇参考コラム
家族信託コラム②~家族信託でできること(その1 認知症対策)~
家族信託コラム⑫~家族信託でできること(その5 高齢者等の財産管理対策)~