家族信託コラム⑦~遺言と家族信託の違い~
ここ最近、ご相談者さんと話をする中で必ずといって聞かれるものとしては「遺言と何が違うのか?」ということがあります。
今週だけでも3回くらい聞かれたこともあり、この機会に、遺言と家族信託の違いを簡単にまとめてみようと思います(本格的なまとめは別途掲載します)。
①認知症への対策における違い
たとえば、ある方が70歳で遺言(財産は全て長女に譲る、など)を書いたとします。
遺言は、遺言者の死亡の時からその効力が生ずるため(民法985条)、仮にその方が90歳で亡くなられたとした場合、その時になって初めて遺言は効力を生じます。
しかし、この間には20年間もあるため、途中でその方が認知症になるなどして意思表示ができなくなったりすることもあります。
そうなってしまった場合には、その方名義の不動産やその他の財産があったとしても一切移転をしたり、処分をしたりすることなどができなくなってしまいます(これを「財産の凍結」と言ったりします)。
次のような話があります。
例えば、元気なときに「私が病気になったりしたら、家を処分してお金にして、病院などに入れてください」と言う話があり、親族全員がそれを叶えたいと思っている場合、その後に、財産の名義を変えることなく、その方が認知症になったりした場合、それ以後は財産を移すことができず、遺言で財産を長女に譲ると書いてあったとしても、遺言が効力を発生するまで、つまりその方が亡くなられるまで、長女が勝手に家を処分することはできず、結果として、ご本人の願いを叶えることができなくなってしまうのです。
他方、家族信託においては、元気なうちに財産の管理などの権限を子供たちに託しておくことで、家族信託をした後に、上記のような事情が起きたとしても、子供たちの意思に基づいた財産の管理、処分をすることができます。
つまり、上記の例で言えば、家を処分して病院に入れてあげるという想いを叶えることができるのです。
このように、認知症に対する対策という点で、家族信託には遺言とは異なる優れた面があります。
②手法の違い
遺言は、その遺言をしようとする人が単独でするものですが、家族信託においては、その多くは契約という手法によります(遺言によることも可能ですが、多くは契約によります)。
家族信託の良い点としては、財産を残したり管理をお願いしようと思う方と財産を残される側が話合いをして仕組みを作ることになるため、しっかりと意思疎通を図ることができることから、残された方々の間で紛争になることを予防することができます。
その他、色々と違いがあるところですが、それについてはまた別の機会に紹介しようと思います。