家族信託コラム(24)~遺言と家族信託の違い(その2)ほか~

 以前、平成28年12月21日のコラム(「遺言と家族信託の違い」)を書かせていただいたところですが、そのときには、遺言では認知症対策ができないことなどを紹介したところです。
 今回は、少し角度を変えた形で、遺言との違いを紹介します。

1 撤回が可能か否かの観点

 あまり知られていないのですが、遺言というのはいつでも撤回が可能なものとなっています(民法1022条)。
 そして、その撤回の権利は放棄をすることができません(民法1026条)。
 家族信託でも、いわゆる遺言代用信託(遺言と同じように自らが死んだら〇〇さんに財産を渡す、ということを内容とした信託)において、財産を託す人である委託者は、受益者を変更する権利を有しています(信託法90条1項本文)。
 つまり、もともとはAさんを受益者としていても、Bさんを受益者に変更することが可能です。
 もっとも、信託法では、契約に別段の定めを置くことができることとしており、その結果、「委託者と受益者が合意をした場合のみ変更ができる」などと言ったように、単純に委託者が撤回できないような仕組みを組むことが可能となっています。
 この仕組みは、例えば会社の事業承継などで利用されるのが典型的な例です。
 会長が後継者の社長に、株式を信託すると、社長は株の議決権を行使することができ、会社の円滑な経営ができます。
 それが、会長が「やっぱり信託はなし」と一方的にできるようにしてしまうと経営が不安定なものになってしまい問題が生じてしまいます。
 このことは、不動産の信託したようなときにもあてはまります。
 「撤回ができるかどうか」という観点からいうと、信託を使うと「撤回不能な遺言」をすることができるという点が特徴の一つといえると思います。

2 家族信託業務を行うにあたって注意している点

 私が日々、相談を受ける中で気を付けていることとして「家族信託」を押し売りしないことがあります。
 たとえば、特段売ったり担保にしたりする予定がない実家がある場合で、相続人が長女一人というような場合であれば、家族信託をする必要はなく、遺言又はなにもしないでよい、というケースもままあります。
 相談に来られた方にとって「どうするのが一番課題の解決につながるか」という観点から対応するようにしています。

弁護士法人 井上・菊永法律事務所 電話082-554-2515 〒730–0012 広島市中区上八丁堀8–26 メープル八丁堀401号

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