少し細かい話になりますが、今日は「受益者指定権者」についてコラムを書きます。
1 家族信託の仕組みの概要
前回と重複するのですが、「家族信託」とは、自分の持っている不動産・預貯金などの資産を信頼できる家族その他の信頼できる人に託して、その管理と処分を任せる いわば「家族の家族による家族のためにする財産管理」をいいます。
そして、上記のうちの財産を託す人が「委託者」で、託される人が「受託者」、財産から利益を受ける人が「受益者」といいます。
例えば、父が自らの財産を長男に託し、その財産から得られる利益(不動産の利用権など)をそのまま自らに残しておくような仕組みがその代表的な例ですが、この例で行くと、父が委託者兼受益者、長男が受託者となります。
※これまでも何度か書きましたが、信託の世界では委託者=受益者となるケースが多いです(自益信託)。
2 受益者指定権者とは
家族信託に携わる人でもあまり知られていない仕組みとして、「受益者指定権者」という仕組みがあります。
これはどういう仕組みかというと、信託の契約の中で、ある人に受益者を変更する権限を与えて、その人(受益者指定権者)が受益者を変更することができるようにする仕組みです。
この仕組み自体は、信託法第89条に規定されていて、そこでは、受益者指定権者は、受託者に対する意思表示などによってその指定権を行使することができるものとされています。
3 受益者指定権の具体的な活用事例
たとえば、父が元気なうちに、その財産を長男に信託をして、当初受益者を父、次男を二次受益者としたようなケースを想定してみましょう。
このような場合、父が死亡後は、次男が受益者になるはずですが、次男の行いが悪くなってしまったような場合に、母に受益者変更権を与えていれば、母が「受益者は次男から変更する」ということをすることができることになります。
このように、受託者指定権を設定することで、自らの死後のことについても制度設計をすることができます。
4 信託を使うと色々なことができる
家族信託というのは、信託法という法律による「信託」という仕組みを使うのですが、この信託という仕組みは色々なことができます。
認知症対策も出来れば、事業承継もできる、共有不動産の円滑な管理にも利用できる、など多様な活用方法があります。
きっと、今は気づいていない使い方もこれからたくさん出てくると思っています。
私も日々、家族信託のことを勉強し、最新の情報を取り入れるようにし、ご相談者様の力になれるように研鑽をしております。
当事務所では、トータルで家族信託のサポートを行っておりますので、ご相談ください。