家族信託コラム(23)~受益権の仕組み~

 これまで何度も登場してきた「受益権」について、その仕組みを少し解説してみたいと思います。
 これまで、財産を託す人=委託者、財産の管理などを託される人=受託者、財産から利益を得る人=受益者という形で説明をしてきました。
 受益者とは「受益権」を持つ人のことをいいますが、この受益権は少し法律の世界では変わった仕組みとなっています。
 通常、民法の世界では、自らの意思に基づくのでなければ権利を得たり、義務を負ったりすることはないとされています(私的自治の原則)。
 よって、勝手に本人の了解を得ない形で財産を渡すことはできません。
 例えば、「100万円あげます」と誰かが言っていても「もらいます」というまで贈与は成立しないのです(ほとんどの人はもらうと思いますが)。
 ところが信託の世界では次のようなことが法律に決められています。
 信託法88条1項では「信託行為(信託契約など)の定めにより受益者となるべき者として指定された者は、当然に受益権を取得する。」となっており、利益を受ける人が承諾するか否かにかかわらず、受益権を渡すことができます。
 これはとても重要な意味を持っています。
 例えば、障がいを持ったお子さんがいらっしゃる場合などで、そのお子さんが法律上の判断能力がないような場合を想定してみましょう。
 このような場合、ご両親が元気なうちに「私達の財産は子どもにあげる」と言っても、お子さんは「もらいます」と単純に言えないため、贈与の成立に疑義が生じうるところですが、信託の仕組みでは、利益を受ける人の承諾は不要なので、全く疑義なく受益権を渡すことができます。
 ちなみに、このようなケースでは障がいを持ったお子さんのために「受益者代理人」とかを置いたりすることが良いかもしれません(受益者代理人についてはまたの機会に書きます)。

 ついついこれまでの既存の考え方にとらわれがちになる私達ですが、この信託という世界では、従来の常識と異なる考え方を取っている部分がままあります。
 それらの仕組みをうまく活用することで、これまで対応できなかった法律の諸問題の解決に寄与できたらと考えています。

弁護士法人 井上・菊永法律事務所 電話082-554-2515 〒730–0012 広島市中区上八丁堀8–26 メープル八丁堀401号

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